日野自動車の排ガス・燃費不正問題【ダメ。絶対! でもね。。。】

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技術士は、高い倫理意識を求められます。

そこで今回はこのテーマを選びました。

【ネタ元】
日野自動車が排出ガス・燃費不正、何が起きたのか 10の追究

不正はいけません。
ダメ。絶対!

でも、責めるのも酷かなと思う部分もあるんです。

ネタ元の記事中で、10個の疑問を追及しています。

Q1:不正の中身は?
Q2:不正なエンジンを搭載した車両は?
Q3:不正が発覚した経緯は?
Q4:悪質性の有無は?
Q5:いつから不正を行っていたのか?
Q6:不正が与える影響は?
Q7:なぜ不正を行ったのか?
Q8:他に不正はないのか?
Q9:出荷の再開はいつか?
Q10:経営陣の責任は?

マスメディアとしては当然の質問かなと思います。

しかし、本当の問題(真因)はここなのか?
というのが最大の疑問です。

例えば、

Q7:なぜ不正を行ったのか?

A7:

  1. 数値目標の達成に対するプレッシャーが過大だった
  2. 開発リードタイムが短すぎた
  3. エンジンの認証部門が独立していなかった(トヨタ自動車は開発設計部門と認証部門が分かれている)

として、経営サイドは反省しているとのことです。

でも、1や2は当たり前じゃないですかね。
1も2もない、そんな温いビジネス、世の中にありますか?

3についても、あるに越したことはないのでしょうが、必須なのでしょうか。
規模が違い過ぎるトヨタと比べるのはどうかと思います。

「社内の『風通し』や仕事の進め方が適切だったのか、開発設計現場のリソースの実力を知った上での計画だったのかなどを含めて外部の有識者を入れた調査委員会で追究していく。」
とのことですが、多少の無理がないと、会社の成長は難しいのではないでしょうか。

現状維持に甘んじては時代の変化についていけず、衰退し、淘汰されます。
危機感を持つ健全な企業であれば、成長を目指すでしょう。
その成長には「適度な負荷」が必要です。

その「適度」のサジ加減はあるかも知れませんが、上記A7-1,2は必要だと思うんです。

で、真因は何かという話になりますが、昨今の「働き方改革」「ワークライフバランス」「ブラック企業」などが、変なプレッシャーになったのではないかと思えてなりません。

「残業は悪」
その考え方はよくわかりますよ。
一般論としては。

でも、開発とか研究って、そういうものではないと思うんです。

そんな簡単ではないし、予定通りいかないし、杓子定規に語れるものではありません。

経営サイドとしては、ビジネスを成功させなければならないし、CSRも無視できない。

内在するトレードオフを排除するのは相当困難です。

僕も経験があるのでよくわかります。

  • 納期を守らなければならない
  • 時間が足りない
  • 残業してはいけない
  • サービス残業もしてはいけない

こういう状況、よくあると思います。

ウルトラCを出さないと無理です。

でも、ウルトラCなんてそうそう出てくるものではありませんよ。

となると、大抵の場合どれかひとつに目をつぶるしかないんです。

こういう話をすると、
「利益優先の企業が悪い」
という人も出てきますが、企業にとって利益を出すこともCSRだと思います。

株主への還元は別としても、
・サービスを提供し続ける社会的責任
・雇用を維持する社会的責任
はあります。

iPhone、iPadを大成功させたアップルのエンジニア達は、寝食を忘れて開発に没頭していたのではないでしょうか。
アップル担当だった部品・素材メーカーの人は良く知ってると思います。
「眠らせないアップル」
とも言われていました。
「アップル担当になると24時間営業になる」
と。

それが良いか悪いかの択一論ではないと思うのですが、何でもかんでも悪とされる今の風潮に違和感を覚えます。

課題と解決策について考察してみる

構造的なトレードオフ

大成功を狙うと、ある程度尖った戦略が必要で、CSRに反する部分が出てきてもおかしくありません。

そこそこの成果を狙うのは、逆にバランスを取るのが難しくなります。

技術者目線でみても、イノベーションを起こすのは難しく、3M(人・物・金)の資源が不足するのは明らかです。

これを解決するには、日本型の雇用形態の見直しが必要だと思います。

解決に必要だと思われるもの。

  • 裁量労働制のイメージアップ
  • 公平公正な評価制度
  • 職種の選択権は従業員が持つ
  • 人材の流動性の促進
  • 転職のポジティブイメージ醸成

やはり、研究・開発職(場合によっては設計職も)は裁量労働制にすべきだと思います。

ただ、裁量制というと、
「企業側が都合よく従業員をこき使う」
という悪いイメージがありますので、そのイメージを払拭する必要があります。

そのためには、まず本人が十分に納得した上で就業できる仕組みが必要です。

評価制度や報酬体系、そして、本人の就業意思。
労使双方の合意の下であれば問題ないと思います。

また、合意に至らなかった場合も、人材の流動性が高まれば、別のマッチングが行われます。

どんどん転職もやった方が、より良いマッチングが成立し易くなりますし、活性化すると思うんですけどね。

未だに日本では転職にネガティブなイメージを持っている人が多いです。
終身雇用の幻想を見続けているのか知りませんが、時代はとっくに変わっています。
もっと現実をよく見なければなりません。

デフレマインド

認証部門を創設するにしろ、開発のマンパワーを増やすにしろ、結局はコストの話になります。

やるべきことをちゃんとやろうとすると、コストが掛かるということです。

その必要コストを売価に計上できないのがデフレの悪いところですね。

所得も上がらず消費も冷え込むという悪循環。

このデフレスパイラルからの脱却が必要ですが、最近は「ミニマリスト」などの流行もあり、昭和後期のような大量消費の時代に戻ることは難しいのかも知れません。

ビジネスとしては、「モノ売りよりコト売り」とよく言われるようになってきています。
商品に「コト」の要素を入れるのが時代にマッチした方法の一つだと思います。

過去の成功体験に縛られず、時代に合わせたビジネスをしていくことが重要です。

今後の展望を予想してみる

2016年にVW、三菱、スズキと立て続けに不正が発覚しました。

対岸の火事と思ったわけではないと思うのですが、この手の不正がなくならないのは、相当根深い問題なのだと思います。

景気のせいばかりにはできませんが、一度初心に帰ることも大事なのかも知れません。

ただ、初心に帰るとブラック企業のレッテルを張られかねません。

難しい時代になったものです。

落合陽一氏が著書『日本再興戦略』で
「元来、日本は、仕事と生活は一つながりだった」
「ワークライフバランス」より「ワークアズライフ」の方が日本人には合っている。
と指摘しています。

「欧米式を追いかけず、初心に帰り日本式を取り戻す」
そういうことができると、未来は変わるのかも知れません。

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